春美荘での出来事のつづき-4

関口明さんは生前、ボクにたくさんのミュージャンや飲食店を紹介してくれた。

「長野県に、櫻井欄丸っていうスゴいシンガーがいるんだ」
「へえ、ボクの父母は長野県の出身だから、ひょっとしたら血つながりかな」
とボクが言ったら関口さんは
「僕が言う櫻井さんは埼玉出身だそうだから、その線は薄いね」

「雄作さん。赤羽に僕の同級生がやっているラーメン屋があるんだ。今度一緒に行かないか」
という連絡がきた。
「赤羽かあ」
とボクは渋ったのだけれど
「旨いんだ。雄作さんのようにお酒を飲みながら長居を出来る店じゃないけどね」
と言うから、もう少しでその店に行きかけたけれど
「今回はさ、二人のおもい出の地の武蔵境の末広に行かないかい」
と約束をした。

彼は、それまで長髪だったボクの頭をおもんばかって
「髪の毛が短いと頭が寒いでしょ」
と言う。
まったくその通りで
「ああ、寒い。こんなにこたえるなんておもってなかったぜ」
と言うと関口さんは
「八甲田山の、天は我々を見放したってなことだよ」
と笑っている。
少し大袈裟だけれど、寒いときにはそんなもんだ。


先日彼が生前愛用していた帽子がボクの元に届いた。
ご遺族からの贈り物である。
ボクはその帽子をかぶって、寒い冬を乗り越えようとおもう。

「春一番が吹いたらしいぜ」
「ああそうかい」
「また春が来るみたいに、きみと会えたら良いな」
「まったくだ」






林家正藏「午後四時から飲む」
https://www.youtube.com/watch?v=hTtLiUp6Ecw








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