Walking on the street-335

2月13日(土)、弱い雪。午後、今日の野球は中止の連絡あり。

四月から小学六年になる息子が野球を始めてから、ボクたちの、何の予定も入っていない休日はこのように突然やってくる。そしてそれは、ささやかだがとてもありがたい一日にもなる。

何しろ土日祝日すべて野球に出かけていく子供を持ったお母さんには、ゆっくり休める休日などないといっていい。
ボクのところなども、今度高三になる娘は、ボクが高校時代バンドにかまけていた以上に真剣に吹奏楽の部活動に取り組んでいる。朝は平日も休日もなく6時前には家を出て行って、帰りも仕事人のボクよりも遅いくらいだ。その上高校生には弁当を持たせないといけないので、カミさんは毎朝娘より早起きをしてその弁当を用意している。
そして土日は野球で、おにぎりだ、ジャグだとなる訳である。
「男はつらいよ」
という映画があるが、正に
「お母さんは大変なのよ」
なのだ。


息子は弱い雪が降る中、表に飛び出して行った。休日の友だちの家にでも上がりこんでいるのかも知れない。娘は部活で元より家にいないからカミさんに
「どうする」
とたずねたら
「家で休んでいる」
と言う。カミさんにとって本当に実感のこもる
「ああ、やっと休める」
という時間なのだとおもうから、簡単な昼食の洗い物はボクがやって、カミさんには休んでいてもらう。
ボクは野球に行く準備はしていたのでユニフォーム姿だが
「今日はこのままでいよう」
と決める。明日の野球の予定は隣り町に遠征して練習試合が組まれているが、ボクはそこで塁審をやることになっているから審判服を着て出かける。だから慌ててユニフォームを洗濯しなくても良い。


考えたらボクも、バンドだ野球だ赤提灯だで色々やっているから、こんな風に時間が自由になることは少ない。だからカミさんを家で休ませておいて、普段なかなか行けない隣り町の酒問屋まで車で出かけて、ウイスキーを買い込む。近所の酒屋で買うより二三割は安いので
「いつもここで買っていれば、赤提灯に何度か余計に行けるのになあ」
とおもう。

そういえばボクがユニフォームを着て野球チームに参加し始めたころ、高学年の選手のお母さんの一人がボクを見て
「桜井コーチ、ユニフォーム全然似合ってない」
とはっきりと言ってくれたことがあって、ボクはそのことをとても可笑しくおもっていたのだが、去年の夏ごろそのお母さんから
「うーん、少し板についてきたかな」
と言われたので
「本当ですかあ」
と返したらそのお母さんは笑いながら
「半分はホント」
と言った。

それで今日、その隣り町の酒問屋の店内の階段付近で、二歳になるかならないかの女の娘が、おぼつかない足取りでいたものだからボクが
「危ない!」
と手を貸してあげていたら、近くにいたその娘の若いお母さんがユニフォーム姿のボクを見てその娘に
「ほら、お兄さんにありがとうしなさい」
と言ったのでボクは驚いた。
ユニフォームが似合う似合わない以前に、ボクはもうすぐ四十五になるオッサンである。
「お兄さんではないぞ」
と言いかけたが、やめておいた。


家に戻ると、カミさんはソファーで寝ていた。
そういえば子供を授かってから、こんなにゆっくりしているカミさんを見るのは久しぶりだなとおもう。やっぱりお母さんは大変なのだ。ボクもそんな風に育ててもらった訳だから、もう少し親孝行しないとホントにバチが当たるだろう。

カミさんを起こさないように、別の部屋でビートルズの「ホワイト・アルバム」を小さくかける。
ボクはこのアルバムのジョンの曲がどれも格別に好きだ。
カミさんを起こさないように、冷蔵庫から缶ビールとグラスを持ち出して、こちらも久しぶりの
「休日の昼間のビール」
と洒落こむ。
「ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」
にシビレながら、ビールをグビッと飲む。

明日はまた朝早くから野球だが、おもいがけずの
「休日の昼間のビール」
も格別である。





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