Baseball boy- -10

東京ヤクルト・スワローズがジャイアンツに三タテを喰らわせた。嬉しい。ボクは真性スワローズ・ファンである。

はっきり言う。ボクはこれまで本当の野球を知らなかった。そのことがよく分かった。野球が好きでこの歳になるまでプロ野球のことや、最近ではメジャー・リーグのことも追いかけていたけれども、ボクは野球に関して全くのド素人だったのだ。それは野球を実際にやったことがない、ということであり、その野球というスポーツが、こんなにも複雑でありながらシンプルなルールの上で成り立っているということを、少年野球チームのコーチとしてその練習や試合に参加して感じている。ボクはこれまで、まったくのにわか野球ファンであったことがよく分かる。だいいち野球というのはスポーツだから、身体を使うんだ。

「コーチは良いなあ、ランニングしなくてよくて」
とチームのタクロウに言われれば
「そんなことないさ、コーチも走るぜ」
と無理を言ってグラウンドを一周してみせる。息上がり股関節はパンパンになる。これくらいのことがもう出来ないのかと、ボクを置いてまたグラウンドをランニングしていく子供たちの背中を眺める。大したものだ。

「コーチは良いなあ、ノックも受けなくて」
とチームのヨウスイに言われれば
「受けてやるぜ。監督、お願いしまあす」
と言って監督からノックを受ける。またその監督が高いワンバウンドのいやらしい球を打つものだから、こっちはダッシュしなけりゃならない。それがキツイ。よくもまあこんな練習に、子供たちはついていっているものだなと、グラウンドでヘトヘトになりながらおもう。


子供たちが毎週野球の練習を行うグラウンドに隣接して、この時期桜が見事に咲き誇る公園がある。息子と一緒に毎週そのグラウンドと公園に行っているが、気象庁が桜の開花宣言を遠慮がちに
「どうしようかな、言ってしまおうかな」
という感じでいようが、そんなこととは関係なく桜が咲けばその公園にシートを敷いて、酒と肴を持って集まってきて宴を開いている二十人とか三十人の団体を見ると、そのフットワークの軽さに驚く。普通は
「葉桜になっていても良いから、今年の花見は四月最初の土曜日にしよう」
とか決めて準備するものだとおもうのだが、桜が咲いたその見ごろの日に、それが何曜日だろうが構わないという感じでその人たちはやって来て、桜の木の下で気炎を上げる。野球に例えるならば優勝が決まるツー・アウト、ベンチに残った選手がいつでも一斉にグラウンドに飛び出していく準備をしているようなものである。

ボクは今年もその公園で、期しくも息子たちの野球チームにつき合いながらそんな光景を見た。不思議だが、その光景はとてもすがすがしい。
「今年も桜が咲いたぞお。今日くらいは昼間から酒を飲んでも良いんだ。さあ、パーッとやろうぜえ」
イヤな出来事をいつも聞かされている。そんなに悪いこともないのになあ。だけどイヤな出来事は絶えない。

ボクは子供たちの野球チームのコーチであるから、その人たちの宴をグルリと眺めてからグラウンドに戻った。しかしあの人たち、いつもはどんな仕事をしているんだろう。良い顔をしたおじさんが何か叫んで、その宴が大変に盛り上がっているのを背中で聴いた。
正直に書く。ボクは近所の酒屋に走ってどれでも良いから酒を買って、その人たちに混じりたいとおもった。

グラウンドに戻ったら、子供たちが監督から、それはキツイだろうというノックを受けていた。念のため子供たちに、桜とか季節感とか聴いてみたが、春夏秋冬を感じて生きている少年は、言い切っては御幣があるかも知れないが、いない。










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