Walking on the street-67
昨年の末から使っているエリクサーの弦が、渋谷の楽器店でバラ売りされているのだという。渋谷のような繁華街に行くことはまったくといっていい程ないが、経済的な理由から故、近い内に行くことになるだろう。何しろ弦が一本切れるたびにワン・セットを買っているには、エリクサーの弦は高いのである。ボクの一晩の飲みシロなどいっぺんになくなってしまう。こういうのを死活問題という。
ボクが暮らしているのは国立であるが、そこは国立市の南に位置する谷保という地域で、幸か不幸か仕事先もその地域内にあるものだから、ボクの毎日の生活は余程のことがない限りそこで完結する。ボクは毎日、その谷保界隈をブラブラと歩いていることになる。
この時分になると、谷保天満宮の梅はまだかということが話題にのぼる。ボクは毎年梅が咲いた陽気の良い日の昼下がりに、弁当と酒を持って谷保天の梅林に出かけるのを楽しみにしているので、そういう話題は無視出来ない。
「今年の冬は寒かったから、梅も遅いかもしれないねえ」
と近所のおばあさんが言う。
「そうですね。去年は暖冬で、梅も桜も早かったですもんねえ」
ボクがそう言うと、おばあさんは言った。
「ほら、国立市のさくら祭りは毎年四月の最初にやるでしょう。去年はそのころ、葉桜も終わってたものねえ」
「確か桜は、三月の十六日には咲いていましたからねえ」
「あれじゃあ市役所の人たちも可哀そうよねえ。せっかくお祭りの予定をしてたのに、葉桜も終わっていたんじゃあ」
「居直ってやってましたけどね。自然には勝てませんよ」
「それはそうだけど、もう少し土地の人に合わせてくれても良いのにねえ」
おばあさんがそのことをあんまり真顔で言ったもんだから、ボクは大笑いして言った。
「アハハハ。そうですよねえ。もう少し、ここの人のことを考えてくれても良いですよねえ。ここの梅や桜なんだから」
谷保から都心に出ることを、ここの人たちは
「東京に行く」
ということは以前にも書いたが、ここの人たちはボクのようなよそ者も受け入れてくれるくらい優しくて、それでボクは生かされている。そうでなければ当の前に、ボクはここからおい出されていただろう。
ボクが暮らしているのは国立であるが、そこは国立市の南に位置する谷保という地域で、幸か不幸か仕事先もその地域内にあるものだから、ボクの毎日の生活は余程のことがない限りそこで完結する。ボクは毎日、その谷保界隈をブラブラと歩いていることになる。
この時分になると、谷保天満宮の梅はまだかということが話題にのぼる。ボクは毎年梅が咲いた陽気の良い日の昼下がりに、弁当と酒を持って谷保天の梅林に出かけるのを楽しみにしているので、そういう話題は無視出来ない。
「今年の冬は寒かったから、梅も遅いかもしれないねえ」
と近所のおばあさんが言う。
「そうですね。去年は暖冬で、梅も桜も早かったですもんねえ」
ボクがそう言うと、おばあさんは言った。
「ほら、国立市のさくら祭りは毎年四月の最初にやるでしょう。去年はそのころ、葉桜も終わってたものねえ」
「確か桜は、三月の十六日には咲いていましたからねえ」
「あれじゃあ市役所の人たちも可哀そうよねえ。せっかくお祭りの予定をしてたのに、葉桜も終わっていたんじゃあ」
「居直ってやってましたけどね。自然には勝てませんよ」
「それはそうだけど、もう少し土地の人に合わせてくれても良いのにねえ」
おばあさんがそのことをあんまり真顔で言ったもんだから、ボクは大笑いして言った。
「アハハハ。そうですよねえ。もう少し、ここの人のことを考えてくれても良いですよねえ。ここの梅や桜なんだから」
谷保から都心に出ることを、ここの人たちは
「東京に行く」
ということは以前にも書いたが、ここの人たちはボクのようなよそ者も受け入れてくれるくらい優しくて、それでボクは生かされている。そうでなければ当の前に、ボクはここからおい出されていただろう。
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