Foolish school time-114

週末の仕事のあとの金曜の夜、P太郎と丸ちゃん夫妻が今年の二月、大森に構えた新居を拝観しようと、友人のYさんと出かけた。夫妻からはさんざん
「来い来い」
と招待を受けていたのだけれど、なかなか都合がつかず、やっとこさ足を運んだという訳だ。


P太郎とは、ボクが入学した都立Y高校で知り合った。ボクが配属されたD組に、彼もいた。ボクの出席番号は七番だったが、本名を井上というP太郎の出席番号は三番で、期しくも出席番号一番の荒井潔と、二番の池田と一緒にバンド活動を開始することになったのは何か不思議な縁があったのだなと、今になっておもうところがある。彼らとのつき合いは今に続いているのだから、こういうのを腐れ縁というのかも知れない。当時、学校で同じクラスにいるのみならず、お互いの家を行き来し、スタジオに足しげく通い、まあしょっちゅう顔をつき合わせていたものだ。今も音楽を続けているのは四人の内ボクとP太郎だけだけれど、Y高時代の濃密なあの時間が、それを支えているのだとおもっている。人との共演も作詞作曲も、すべてあのときに学んだことだ。お酒のことは、まあ置いておく。

Y高校を卒業したのち、1985年から2005年までのあいだに三度の引っ越しを行ったボクは、そんなバンド・メンバーたちとの連絡手段を次第に失っていった。ボクに限っていえば、荒井潔とだけは連絡を取り合うことが出来、彼とはたまに顔を合わせてお酒を飲むことが出来たから
「おい、池田とP太郎はどうしてる」
という話しをよくしたのであるが、荒井も、彼らとの連絡手段を持っていないということで、どうやら不義理なのはボクだけではなかったようだ。よくいえばそれぞれに、懸命に生きていた、ということであり、まあそうに違いない。

2005年からボクが始めたこのブログの中に
「Foolish school time」
というタイトルで高校時代のバンドの話しを書きだした。誰が読んでくれるかも知れぬ世界のことだから、池田やP太郎との再会を念じていた訳ではない。ただ、ああいう馬鹿なことをした、という時代を記録に残しておこうとおもったばかりのことである。
それがその年の秋
「P太郎P太郎と書き綴っている輩がいる」
と、ボクのそのブログを読んだ都立Y高校の同窓生の女子がいて、そのことを伝えきいたP太郎が、ボクが四谷コタンでライヴをやり、その傍らのピヤシリというラーメン屋で飲んだ暮れていることも突き止め、そこに現れたときには驚いた。彼は高校時代からしたらだいぶ太って容姿が変っていたから、彼をあのP太郎だと認識するまでには、おそらく十秒ほどの時間を要したとおもうけれど、ともかく驚いた。

それからボクとP太郎は、四谷コタンで一緒にライヴを演るようになった。彼は高校時代のバンドではドラマーだったが、悔しいけれど弦楽器にも精通している男で、ボクとのライヴでは電気ベースを弾いてもらった。そのベースはポール・マッカートニーが愛用しているヘフナー製のバイオリン・ベースである。ボクが高校時代バンドで使っていたバイオリン・ベースも木目のリッケンバッカーも、グレコのコピー・モデルなのであるから、まったく憎ったらしい奴である。

それからほどなく、ギタリストだった池田とも連絡が取れるようになり、二十年ぶりにバンド・メンバー四人で再会出来たときには何とも可笑しかったけれど、彼らは一様にボクのブログを読んだ感想をこう言うのである。
「俺はあんなことを言ってはいない」
「お前は話しを脚色し過ぎているのではないか」
「俺の人格に誤解を及ぼすような表現は即刻やめてもらいたい」
だからボクはこう返すのだ。
「きみが移動教室出発を待つバスの先生の前で、ポケットからライターを落として、挙げ句にボストンバックの中の角瓶を発見されて、頭を丸坊主にされたことは、クラス全員が目撃した事実だぜ」


そうして先週末、P太郎と丸ちゃんが大森駅西の小高い丘の上の閑静な住宅街に構えた新居にお邪魔した。ボクのリュックには、Yさんと
「迷子になりそうですね」
と言いながら大森駅地下で買い求めた日本酒二本とワインがズシリとおぶさっている。仕事のあとの訪問であったので、時間はだいぶ遅い。その日の内においとましようとおもっていたが、お酒のこともあり、話しは弾み、それは果たせない。近所に住まいのあるドランカーズの麻衣ちゃんもやって来た。まあ良いや甘えることにしようとおもう。

「お前の寝る部屋はここだ。言っておくが、部屋を出た右はすぐに下り階段だからな。間違っても落ちるな」
P太郎が、何度も何度も言ってくれる。
その通り。落ちたら終わりだろう。

二人の家には、ホタテとメバルという二匹のオス犬が暮らしている。ボクは小動物は苦手なのだけれど、何故か彼らとは平気でいられる。彼らも、酔っ払いのボクの匂いをクンクンかぎながら近寄ってきてくれるので、たぶん嫌われてはいないなと自負している。しかし、だからどうということでもない。


翌朝、丸ちゃんが作ってくれた握り飯が旨かった。おまけに迎え酒のプレミアム・モルツ付きである。
「もう良いやあ」
とおもうしかないであろう。
彼らの新居の、陽射しの暖かいベランダのイスに座ってそいつをいただく。
「こういうのを、ゼイタクっていうんだよね」
なんてことを言いながら、タバコに火をつける。
ベランダから中のリビングではP太郎が、昨年十一月のポール・マッカートニーのライヴ映像を流している。
「エイト・デイズ・ア・ウィークで来るとはおもわなかったな」
「メイビー・アイム・アメイズドはさ、完璧にリンダへのラブ・ソングだぜ」
「ジョンのにも、そういうのはあるよ」
「ボクはさあ、マイ・ラブのこのギター・ソロが好きでねえ」
「こいつは若過ぎるな、味がない。ヘンリーのは良かったさあ」
「ところでさあ、ポールは大丈夫なのかあ」
「大丈夫だよ。また来るさ」



高校時代も含めた若いときには、どれだけ時間を無駄にしていたことかと、この歳になるとよおく分かる。しかし、それも人生の一翼なのだ。






ジョン・レノン
「スターティング・オーバー」
https://www.youtube.com/watch?v=iAJ2AoEwDvY














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この記事へのコメント

P太郎
2014年05月25日 17:22
ぼくのベースはバイオリンベースではない。
ヘフナーだけどクラブベースといってレスポールみたいな形をしている。
ぼくの住まいは大森西ではなく山王です。
桜井 雄作
2014年05月25日 18:34
お前は昔っから、こまかいことをこまごまと言う野郎だ。ヘフナーのことも山王のことも分かっているよ。

夕べは世話になった。奥さんの丸ちゃんにはくれぐれもよろしく伝えてくれ。昨日は休みだった池上通りの「ひら蕎麦」にはまた案内いただきたい。
池田
2014年05月26日 23:47
なんだP太郎、普通に泊めたんだ^^
酔い潰れて寝ている口にタバスコたらしとけばスティーブン雄作タイラーが楽しめたのに^^
あの顔は面白かったなぁ
桜井 雄作
2014年05月27日 23:41
ケッケケッケー、今に見ていろ池田め。
その内ホントに東京湾に沈めてやるからな。
ケケケッケー。

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