Walking on the street-517

ゴールデン・ウイークである。
「品川のお婆ちゃんの家に遊びに行きたい」
と言っている中二の息子は、連日野球部の部活で忙しいらしく、それは叶わないでいる。二十歳の娘も、バイトだ何だと家を出たり入ったりしてバタバタしている。それほど動き回っていれば少しは体内の脂肪も消費されるのではないかと見ているが、女の人が
「やせたい」
とか言うときの本当の決意について、ボクは不案内である。そうして息子の部活の事情で、品川の実家に出かけることが出来ないことを、ボクは歓迎している。その家に行けば、母親から何を言われるか分かったものではない。


夕べから、二郎ラーメンが食べたいとおもいつめていた。それほど深刻なことでもないが、食べたい。
それでインターネットで調べてみたら、府中にある二郎ラーメンは、金曜日もやっているらしい。
その旨、家族に話そうと居間に行ったら誰もいない。時計を見たら深夜の三時だから仕方ない。誤解があるといけないから一応書いておくと、ボクは普段からそういう行儀の悪い生活をしているのではない。いつもは朝六時に起きて、七時のバスに乗って、颯爽と青山の会社まで出かけていくという理想的な父親である。どこがどう理想的なのかは省略しておくことにして、どれだけ理想的な父親なのかは内緒にしておくが、朝十時に目をさましたら家の中に誰もいない。ゴールデンウィークだからボクはずいぶんリラックスしていたことになるが、それにしても家の中に家族が誰もいないほど、この連休中にも家族には予定がつまっていたのだろう。
冷蔵庫を開ける。
いつもそこに入っているコーヒー・サーバーは空である。
「しまった。夕べの夜中湧かしておけば良かった」
カミさんを責める気は毛頭ない。昨日の朝、ボクがガボガボ飲み過ぎたからのことだ。
牛乳をカップに入れて、飲む。コーヒーに薄めて飲む味とはだいぶ違うが仕方がない。タバコに火をつける。
それで、時計に目をやる。
「十時ちょっと過ぎかあ」
家族は誰もいない。世間はゴールデン・ウィークである。そうして家族は各々予定があって家を空けている。

「まあ、良っかあ」

二郎ラーメンも、コーヒーも、家族もいないゴールデン・ウィークである。

台所の隅に置かれた、サーバーのコーヒーを見つけた。
そいつをカップに入れて飲んでいたら、昼過ぎに泥だらけの息子が帰ってきた。

「野球かい」
「当たり前だろ」
「レギュラーは取れそうかい」
「分からないけどね、そのためにやってる。お父さんは何してるんだよ」
「ゴールデン・ウィークをしてるんだよ」
「何だよそれ」
「そうだよなあ、きみには正月もゴールデン・ウィークもないからなあ」
「訳が分からない。そいじゃあ行くよ」
「ああ行っといで」


ゴールデン・ウィークなんてロクでもないという定義をしてみる。
そしてその答えは自ずと日常に跳ね返ってくる訳で、二郎ラーメンにも行けない、朝のコーヒーも飲めない、息子の野球の試合も見られないということになる。


陳氏がアメリカに亡命なんて話しは、普通に暮らしてるボクたちからするならば
「知ったことか」
だよ。ホントに
「知ったことか」
だ。



ポール・マッカートー
「アビー・ロードB面メドレー」
http://www.youtube.com/watch?v=osAA8q86COY&feature=related







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