Walking on the street-496
外の明かりがなくなるから、余計にその店が灯す提灯の灯りが地方都市の町の中で際立つ。ボクはその、居酒屋らしい店の中に入っていく。
L字の板の端っこで、どう見てもジャンキーらしいジイさんが程よく酔っ払っている。
だけれども、電車の中で同乗者に不愉快な感じを与える風でもないから、ボクはそのジイさんの隣りに座ってホッピーを頼んだ。
ジイさん曰く
「アンタ、どこから来たんだ」
地元の人からするならば、まずそういうことだろう。
「東京です」
と答える。
ジイさんは、少し考えてから言った。
「東京っていったって色々あるだろ」
そりゃあそうだとおもってボクは
「国立っていうところなんですけれども、ご存知ないですよねえ」
と言うと、ジイさんは、少しは見識のあるところを見せたいと見えて
「国立かい、コクリツじゃなくてクニタチかい。はあ、俺の辞書にはないな、で、アンタはどこの人なんだい」
ということになる。ボクがその土地のことをまるで知らないのと同じように、その土地のジイさんが谷保のことなど知っているものか。そんなことは分かっているから、ジイさんの話しをきく。
「二年前に女房が亡くなってな」
ジイさんは酒を飲んでいる。
酒を飲んでいるが、その先のグラスにはビールが並々と注がれて置かれている。
「お父さん、そのビールはどうするのですか」
とボクが余計なことを言ったらジイさんは
「このビールはバアさんに飲んでもらおうとおもってここに置いてもらっている。きみが気にすることではない」
と一蹴りされる。
「すみません」
とか言いながら、ホッピーの中をもらう。
ジイさんが
「きみは知っているか。山口瞳という作家が、九段下の寿司屋で三島由紀夫と一緒になったときのことを」
その話しは山口さんの本を読んで知っていたが、ジイさんには
「知りません。どうなったのですか」
と答えたら
「三島は、マグロばかり注文して、つまりその店のことなどおかまいなしだった訳だな。で、あなたが山口派か三島派って話しさ、ガハハハ」
ボクにはそのジイさんの話しが面白かった。魅力的な年寄りだった。ボクもそんな年寄りになりたいとお
もった。それにしても、旨い酒というのは、おもいがけずあるものである。
カール・パーキンスとその仲間たち
「ロカビリー・セッション」
http://www.youtube.com/watch?v=ph1HZ-Uq70I&feature=g-vrec&context=G21550f9RVAAAAAAAAAg
L字の板の端っこで、どう見てもジャンキーらしいジイさんが程よく酔っ払っている。
だけれども、電車の中で同乗者に不愉快な感じを与える風でもないから、ボクはそのジイさんの隣りに座ってホッピーを頼んだ。
ジイさん曰く
「アンタ、どこから来たんだ」
地元の人からするならば、まずそういうことだろう。
「東京です」
と答える。
ジイさんは、少し考えてから言った。
「東京っていったって色々あるだろ」
そりゃあそうだとおもってボクは
「国立っていうところなんですけれども、ご存知ないですよねえ」
と言うと、ジイさんは、少しは見識のあるところを見せたいと見えて
「国立かい、コクリツじゃなくてクニタチかい。はあ、俺の辞書にはないな、で、アンタはどこの人なんだい」
ということになる。ボクがその土地のことをまるで知らないのと同じように、その土地のジイさんが谷保のことなど知っているものか。そんなことは分かっているから、ジイさんの話しをきく。
「二年前に女房が亡くなってな」
ジイさんは酒を飲んでいる。
酒を飲んでいるが、その先のグラスにはビールが並々と注がれて置かれている。
「お父さん、そのビールはどうするのですか」
とボクが余計なことを言ったらジイさんは
「このビールはバアさんに飲んでもらおうとおもってここに置いてもらっている。きみが気にすることではない」
と一蹴りされる。
「すみません」
とか言いながら、ホッピーの中をもらう。
ジイさんが
「きみは知っているか。山口瞳という作家が、九段下の寿司屋で三島由紀夫と一緒になったときのことを」
その話しは山口さんの本を読んで知っていたが、ジイさんには
「知りません。どうなったのですか」
と答えたら
「三島は、マグロばかり注文して、つまりその店のことなどおかまいなしだった訳だな。で、あなたが山口派か三島派って話しさ、ガハハハ」
ボクにはそのジイさんの話しが面白かった。魅力的な年寄りだった。ボクもそんな年寄りになりたいとお
もった。それにしても、旨い酒というのは、おもいがけずあるものである。
カール・パーキンスとその仲間たち
「ロカビリー・セッション」
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